Web版 解説ノート

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2022年1月20日(木)更新

意外と知らないサバのこと。

2022年1月20日(木)更新

私たちが食べているサバは3種類

日本の食卓に並ぶサバといえばマサバ、ゴマサバ、タイセイヨウマサバの3種です。ちなみに1000尾に1尾くらいの割合でマサバとゴマサバのハイブリッドもいるそうです。

「マサバ」は千島列島以南の日本周辺および北米・南米の太平洋沿岸に分布します。背側に特有の緑青色の斑文があります。回遊魚で春から夏にかけて北上し、秋から冬に南下します。なかにはごく少数ですが回遊せず沿岸近くに留まる、いわゆる「瀬付き」のサバも存在します。

鯖のイラスト
イラスト/細密画工房

「ゴマサバ」はマサバよりも高温・高塩分の水域を好み、断面が丸いことから「マルサバ」と呼ぶ地域もあります。銀白色の地をした腹側に黒い小斑点があります。マサバが夏に味が落ちるのに対し、ゴマサバは脂の変化が少なく、夏が旬といわれます。漁獲量が多いのも夏です。

「タイセイヨウマサバ」は大西洋北部に生息するサバで、日本では1990年代初めにノルウェーからの輸入量が急増したため「ノルウェーサバ」と呼ばれることも多いです。背にくっきりと黒く太いラインがあるのが特徴です。5月〜6月に産卵すると、北上しながら成長し、大量の脂肪を蓄積します(体重の約30%)

では、我が国のサバの代表、マサバについて詳しく見てみましょう。

日本のサバ漁獲量は世界一

マサバは2歳で成熟します。太平洋側の主要な産卵地は伊豆諸島付近で、産卵の最盛期は3〜4月。卵は1mmくらいの大きさで、1回につき2〜9万粒と膨大な数の卵を4〜5回に分けて産みます。卵や孵化した稚魚は海流にのって沖合へと流されます。

サバの稚魚の口は大きく、早いうちからプランクトンを餌にしますが、特徴的なのは同じサバの卵や稚魚も食べてしまうこと。共食いをして大きくなるのです。

もちろん、稚魚は他の魚にも補食されますから、1尾のメスが10万粒の卵を生んでも、30mmまで達するのはわずか42尾(生残率0.00014)という研究報告もあります。

無駄にたくさん卵を生んでいるようですが、雌雄2尾から42尾、つまり約20倍に増えたと考えると、なかなか優れた生き残り戦略ともいえます。

全長3~5cmになると遊泳力もつき、群れをつくって回遊をはじめ、5cmを超えると沿岸に押し寄せます。春になると豊富な餌を求めて北上し、大きくなると秋の終りに群れをつくって南下し、暖かい海で越冬します。

これを繰り返して1歳で24cm、3歳で35cm、6歳で40cmくらいに成長します。寿命は約7年といわれています。

世界で漁獲されている魚のなかで、サバ類は大きなウエイトを占めています。そして、世界で最もサバ類を漁獲しているのが日本です。

サバ類の国別漁獲量(2013年)のグラフ

サバが小型で痩せてきている

1970年代、日本では100万トンを超えるサバの漁獲がありましたが、1990年にかけて急減、不漁が続きました。近年はサバの水揚げは好調ですが、痩せているサバが多いのだそうです。

サバの研究を続ける中央水産研究所資源管理研究センター(現水産資源研究所)の由上龍嗣さんにお聞きしました。

「漁獲量は増えているのですが、3歳魚なら35cm、520gくらいまで成長していいはずなのに29cm、270gしかありませんでした。小型で痩せているのです。

資源が増えると、一匹あたりの餌の量が減り、成長が悪くなることが知られています。これは『密度効果』と呼ばれ、豊漁だった1970年代もサバは小型化しました。


しかし、最近、増えたといっても70年代レベルまで回復したわけでもないのに、なぜ小型化したのか。理由はよくわかっていません。海洋環境が変化し、餌が少ないのか。回遊経路が変わり餌の少ない海域に行ってしまったのか。水温が低く成長が鈍ったのか……」

鯖 水揚げ時の写真

サバは鮮魚市場に流通するのは500gというのが一つの目安で、それ以下のサイズは塩サバや干物、缶詰といった食用加工品用になります。

小さなサバは養殖魚の餌に加工されるものも多く、総じて価値が低いのですが、100g前後のサバでもマグロ延縄漁の餌として高く売れるものもあります。

かつては鮮度の悪いものが飼肥料になっていましたが、港の処理能力以上の水揚げがあったために、鮮度がよくても飼肥料になってしまう場合も少なくありません。

日本からアフリカへ。現代版鯖街道

漁獲量の増加とともに、この10年でサバの輸出が急激に増えています。なかでも大きく伸びているのがアフリカ諸国向けです。アフリカにもサバ類はいるのですが、総じて貧しいアフリカ諸国。捕る漁船も技術も製氷機の設備もないため、魚は輸入に頼らざるをえません。

国産サバの輸出先(2016年)のグラフ

水産物輸出コンサルタントの原亮一さんにうかがいました。

「かつてアフリカは、旧宗主国である欧州からサバを輸入していました。しかし、欧州が資源保護のために、漁業を管理して大きな魚を獲るようになったことから、魚価が上がり、貧しい国は手が出せなくなってしまったのです。

ところが日本は小さなサバも漁獲しています。量が獲れてしかも安い。そこでアフリカ向けの輸出が始まったのです。

ガーナやナイジェリアの港に届いたサバは解凍後、保存性を高めるために丸のまま薫製にされ、マリやブルキナファソといったアフリカ内陸部にも運ばれています」

日本のサバがアフリカ内陸へ運ばれる。まさに現代版鯖街道です。

ガーナ港町での鯖の薫製風景の写真
ガーナの港町の薫製風景。船便で日本産の冷凍サバが届くと村は一面サバの薫製工場となる。シチューのような煮込み料理に使うことが多い。
ときめきの鯖きらめきの鯵

ときめきの鯖きらめきの鯵

ときめきの鯖きらめきの鯵

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