Web版 解説ノート
2022年3月21日(月)更新
みんな大好きアジの開きにアジフライ。
2022年3月21日(月)更新
アジの漁獲量が多いのは圧倒的に九州
アジの仲間は全世界の熱帯・温帯海域に多くの種類が生息します。種類は140種ともいわれており、サンゴ礁域に住む15cmくらいのミヤカミヒラアジから180cm以上にもなるロウニンアジまで、生息地も大きさも様々です。
共通しているのは頭から尾にかけて「ぜいご」「ぜんご」と呼ばれるトゲのような固く鋭い突起をもつ稜鱗が発達していることです。
ここでは、マアジを中心に取り上げます。
マアジは北西太平洋の固有種で、北海道から南シナ海まで全国に分布しますが、とくに日本海や東シナ海で多く漁獲されています。2015年の漁獲量(属人統計)を県別でみると長崎が圧倒的に多く42%、ついで島根17%。3位以下は福岡、愛媛、鳥取が同じ5%くらいで、3位以下は毎年のように入れ替わります。下のグラフは市場(水揚港)別の水揚量ですが、やはり九州や山陰地方が上位を占めています。
漁獲される体長は30cmくらいまでですが、50cmまで大きくなるものもいます。
外洋を回遊する「回遊型」と、浅海の岩礁域に定着する「居つき型(瀬付き)」では、体色と体型が大きく異なります。「回遊型」は体色が黒っぽく、細長い体型をしています。一方、居つき型は全体的に黄色みが強く、体高が高く脂がのっているのが特徴です。
東京湾沿岸では回遊型を「クロアジ」「ノドグロ」、居つき型を「キンアジ」「キアジ」と呼んで区別しています。クロアジは春から夏にかけて北上し、秋から冬にかけて南下する「南北回遊」をし、キンアジは季節的に沖合と沿岸を移動します。
マアジは全国に広く分布しているため産卵期は非常に長く、いつもどこかの海域で産卵している感じです。西日本では年明けから初夏にかけて、関東沿岸では初夏から夏にかけて、北海道では8月頃が産卵期です。一般的に4〜7月が脂がのって美味しい旬の時期といわれています。
旨みの決め手となるイノシン酸が多いことから味にコクがあり美味しいからアジという名がついたという説もありますが、定かではありません。
また、漢字で「鰺」と書くのも旧暦の3月(新暦の3月下旬から5月上旬)に旬となったから、群れをなす(参集する)から、美味しくて参ってしまうから……など、様々な説があります。
デカい「アジの開き」はオランダ生まれ?
アジの消費は8割が国内生産でまかなわれていますが、2割ほど海外から輸入しています。
輸入元の1位は韓国です。対馬海峡の韓国側、主に済州島・対馬近海・忠武の3つの漁場で漁獲され、なかでも、済州島近海で獲れるアジは最高品質といわれています。
しかし、グラフからもわかるように輸入品のほとんどは欧州からです。1980年代、日本のアジの漁獲量が激減したために、欧州から輸入されるようになりました。なかでも多いのがオランダ産、アイルランド産です。
欧州で獲れるアジは、マアジと近縁のニシマアジという種類です。マアジに比べると頭と「ぜいご」がやや大きめで、ドーバー海峡周辺でも獲れることから「ドーバーマアジ」と呼ばれることもあります。
このニシマアジ、欧州ではあまり食されていなかったのですが、日本が干物用に大量購入するようになったことから経済的価値が高まり、漁獲対象魚となりました。
店頭に並ぶアジの開きでサイズの大きいものは欧州産だと思って間違いないでしょう。というのも国産の大きなアジは高い値がつくので、ほとんどが干物ではなく鮮魚として消費されるからです。
活魚料理店の水槽で泳いでいるのは養殖アジ
同じ青魚でも、イワシやサバと比べると、加工品よりも生鮮として扱われることが多いのがアジの特徴です。イワシ缶、サバ缶はあってもアジ缶はあまり見かけません。
アジは日本を代表する大衆魚の一つですが、養殖もされています。最も盛んなのが静岡県。沼津を中心に駿河湾奥部の波静かな海上生簀で養殖しています。
養殖は、まず7〜8cmの稚魚を捕まえ、生簀で10カ月〜2年飼育し、15〜20cmくらいまで育てて出荷します。
出荷先は主に活魚料理店。店の水槽にアジが泳いでいるのを見たことがあると思いますが、これはほぼ養殖のアジです。養殖アジのほうが安定出荷できて、水槽で活かしやすいというのが理由のようです。
ときめきの鯖 きらめきの鯵
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