Web版 解説ノート

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2021年6月1日(火)更新

グラフでわかる日本人とマグロ

2021年6月1日(火)更新

マグロはよく食べる魚の第2位

日本人の魚離れが話題になって久しくなります。農林水産省の「食料需給表」によれば、食用魚介類の1人1年当たりの消費量は2001年の40.2kgをピークに19年には約20kgまで減少してしまいました。

クロマグロの写真

そんな私たちは、どんな魚を家で食べているのかというと、トップはサケ。2位がマグロ、3位がブリ。どれも天然・養殖の両方の供給があるので1年中買うことができ、元のサイズが大きいため最初から切り身や刺身の状態で売られるので、調理やゴミ処理の手間が少なく、骨もほとんど気にならないというのが人気の理由なのでしょう。ちなみに1965年のデータでは1位アジ、2位イカ、3位サバで、マグロは5位でした。

鮮魚の1世帯当たり購入数量に占めるマグロの割合 グラフ

前回みたように、日本の食卓に供給されている主なマグロは5種です。では、輸入、養殖も含めて、国内にはどの種類のマグロが供給されているのでしょうか。種類別にみてみると、メバチとキハダが多く、この2種でマグロ類の約7割を占めています。私たちが食べているマグロといえば、メバチとキハダなのです。

食卓にのぼるマグロの種別割合 グラフ

国産と輸入はほぼ半分半分

次にマグロを国産(養殖含む)と輸入で分けてみたのが下のグラフです。国産と輸入は丁度半分ずつくらいといったところです。

マグロ生産国別供給量 グラフ

まず、国産のマグロをみてみましょう。日本は何マグロを獲っているのかが下の円グラフです。キハダがトップで44%。次いでビンナガ25%、メバチ22%と続きます。

日本のマグロ類魚種別漁獲量 グラフ

クロマグロの輸入元のトップはマルタ

では次に、食卓に並ぶマグロの半分を占める輸入マグロをみてみましょう。

冷凍のメバチとキハダは台湾、中国から。冷凍のビンナガは台湾、バヌアツから多く輸入しています。クロマグロはその約半分を海外から輸入していますが、その多くは養殖マグロです。どんな国から送られてきているのでしょうか。

クロマグロの輸入元(2018年推計) グラフ

マルタは地中海に浮かぶ小さな島で、人口40万人のミニ国家です。ちなみにマルタは日本と同じで自動車は左側通行で、日本は中古車をマルタに多く輸出しています。

輸入されるマグロは1990年代後半から冷凍ものが急増し、現在は生鮮・冷蔵が約2割、冷凍が約8割です。資源保護・管理のため、クロマグロなどは正規許可船リストに登録されている漁船が漁獲したものでなければ輸入は認められません。また、地中海の養殖マグロも、正規リストに登録されている蓄養場から出荷されたものしか輸入が認められません。

マグロの町といえばどこ?

もう少ししつこくみてみましょう。みなさんはマグロの町といったらどこを思い浮かべますか? 三崎? 焼津? 那智勝浦?

マグロの魚種別に水揚げ量の上位3港をあげてみました。生と冷凍では扱いが違いますから、これも別にしてカウントしました。ちなみにマグロ(生)とマグロ(冷)は、クロマグロとミナミマグロの成魚の合計値ですが、(生)は全量がクロマグロで、(冷)はほとんどがミナミマグロだと思ってください。

マグロ魚種・漁港別水揚げ量 上位3港 表

境港は日本海のまき網漁船の中心基地です。2005年以降、クロマグロの水揚げ量全国一の年がほとんどですが、境港のマグロ漁は1982年から始まった比較的新しい漁業です。

港周辺には缶詰工場や加工工場が多く集まり、海外まき網漁業によるマグロ類の約7割が水揚げされるのが焼津港です。インド洋で操業する船の水揚げが中心だったことから、「インドまぐろ」(ミナミマグロ)も焼津の象徴的存在です。

塩釜港は、表にない生キハダ(6位)、生ビンナガ(5位)も含め、有数の生マグロの水揚げ港。夏のクロマグロ、秋の「三陸塩竈ひがしもの」とブランド化されたメバチのおいしさは格別です。

三崎港は天然の良港として早くから沖合・沿岸漁業の拠点でした。昭和30年代に冷凍庫を搭載した冷凍船が登場。遠洋での漁が可能になるとともに、全国有数のマグロ類の水揚げを記録する遠洋漁業基地として知られるようになりました。

銚子港は9年連続日本一(2019年)の水揚げ量を誇る首都圏向け魚介類の供給基地として有名ですが、生メバチ(4位)、生キハダ(1位)、生ビンナガ(4位)とマグロ類の水揚げも屈指です。

勝浦港(和歌山)はクロマグロ(11位)、メバチ(3位)、キハダ(2位)、ビンナガ(2位)と日本屈指の生マグロの水揚げ量を誇る港。町には30軒以上のマグロ料理店があり、毎年1月末には「まぐろ祭り」が開催されています。

いかがでしたでしょうか。マグロの町といってもマグロの種類や生・冷凍によっていろいろな特徴があるのです。

海なし県ほどマグロ好き

ひとくくりに日本といっても県民性があります。マグロを好む県は何県なのでしょうか。総務省「家計調査」(2019年)の都道府県庁所在市の1世帯当たりの購入数量を調べてみると、栃木、群馬、山梨など海なし県が上位にきています。

都道府県庁所在市別1世帯当たりのマグロ購入数量 グラフ

最下位は意外なことに長崎。なぜ意外かというと、長崎は日本一マグロの養殖が盛んな県だからです。長崎だけでなく、九州はマグロの消費量が少ないのも面白い傾向です。

次回は、マグロの漁獲方法と資源問題を取り上げることにしましょう。

マグロ好き。

マグロ好き。

マグロ好き。

どんな種類がいるのか? 国産と輸入の割合は? 天然と養殖はどちらが多い? いつも食べている大好きなマグロのこと、意外に知らないのではないでしょうか?

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