鮭
さけ
2020年11月17日 掲載
人類の繁栄はサケが支えた……!?
サケの仲間にはベニザケ、カラフトマス、キングサーモン、ギンザケ、ニジマスなどいろいろな種類がありますが、日本の河川に遡上するほとんどは「シロザケ」です(2番はカラフトマス)。
ただ、シロザケという呼び方はあまり馴染みがないかもしれません。一般的には「秋鮭(アキザケ)」「秋味(アキアジ)」でしょうか。季節外れの春から夏にかけてとれるシロザケは「時不知(トキシラズ)」「時鮭(トキザケ)」とも呼ばれます。
サケの漁獲量の約80%は北海道で、2位の岩手(約10%)を大きく引き離してダントツです。
では、私たちが普段食べているサケは、日本の川で生まれ、ベーリング海〜アラスカ湾を回遊し、元気よく生まれ故郷に戻ってきたシロザケかというと、そうでもありません。日本のサケ市場の半分以上は、海外から輸入された養殖のサケが占めているのです。
世界中でサケの養殖は年々盛んになっていて、現在は天然の漁獲量の2倍以上の量が養殖されています。なかでもノルウェーとチリが両横綱で、世界のサケ養殖生産量の約80%のシェアを占めています。
もともとサケは北半球にしか生息していませんでした。南半球のチリが養殖を始めたのは1970年代。現在では南半球のニュージーランドやオーストラリア、南アフリカのレソト王国などでもサケは養殖されています。
種類でいうと、タイセイヨウサケ(アトランティックサーモン)が最も多く養殖されていて、次いでニジマス、ギンザケ。ベニザケは飼育するのが難しく養殖されていないようです。
サケは「日本人がよく食べる魚」のトップに2010年から君臨していますが、サケの需要が拡大したのは世界の養殖生産量が天然漁獲量を上回った1990年代半ばからです。
養殖生産量が増えて供給が安定し、お手頃価格になったことに加え、おにぎりや弁当でサケを扱うコンビニエンスストアが急成長したことも需要拡大の要因です。
養殖サケの普及で変わったのが日本人の食習慣です。それまでサケといえば焼いて食べる塩鮭で、生で食べる習慣はありませんでした。ところが養殖されたサケには寄生虫がいませんから、寿司や刺身などサケを生で食べる機会が多くなり、次第に需要も増えていったのです。
「ごちそう」と呼ばれることの少なくなったサケですが、アイヌはシロザケを「カムイチュブ(神の魚)」と呼びます。
20万年前にアフリカで生まれた私たちの祖先(ホモ・サピエンス)は、急速に地球上の隅々にまで拡散していきました。ヒトはマンモスやカリブー(トナカイ)などの大型哺乳動物を追いながら、現在のベーリング海峡を越え、アメリカ大陸へ渡ったといわれています。
しかし、極北の地で大型の動物を狩ることは容易ではありません。厳しい自然環境にもかかわらず飢えずに生きのびることができたのは、毎年、浅い川で容易に獲れるサケが豊富にいたからではないでしょうか。
そう考えると、サケは偉大です。感謝して、ありがたくいただきたいものです。
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