Web版 解説ノート

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2021年4月20日(火)更新

マグロ好きのためのマグロ案内。

2021年4月20日(火)更新

ひとまとめにマグロといっても‥‥

刺身や寿司の代表といえば、やはりマグロのトロでしょう。これまでは世界で漁獲されたマグロのうち、刺身向けマグロのほとんどは日本人が消費してきましたが、近年は寿司などの日本食ブームもあって海外での需要も増えています。

最近では「マグロが減っている」「将来、トロは食ベられなくなるかも」というニュースをよく耳にするようにもなりました。では、マグロとはどんな魚なのでしょう。

マグロの仲間は温かい南の海でたくさんの卵を産みます。例えばクロマグロは直径1mmほどの大きさの卵を1〜2日おきに何度かに分けて、約5000万個産みます。

大変な数ですが、このなかから成魚にまで育つのは、ほんの数匹か十数匹しかいません。ほとんどは、他の魚に食べられたり、死んでしまいます。先に産まれたマグロの稚魚が、あとに生まれたマグロの仔魚や卵を食べることもあります。エサとなるプランクトンが少ない南の海では、仔魚や卵は貴重な栄養なのです。

クロマグロの場合、春に生まれたときは全長3mmですが、秋には20~30cmにまで成長します。オキアミやイワシ、サンマ、トビウオ、サバ、カツオなどの魚やイカを食べながら成長し、生後1年で50cm(約2.5kg)、3年で1m(約25kg)、10年で2m (約165kg) を超えるようになります。

ひとまとめに「マグロ」といっても色々な種類がいます。食卓に並ぶ主なマグロといえば、クロマグロ(ホンマグロ)、ミナミマグロ(インドマグロ)、メバチ、キハダ、ビンナガ(ビンチョウ)の5種類でしょうか。どれも耳にしたことがあると思います。

同じマグロでも種類によって生態や用途は違います。初回ですから種類ごとの生態と利用を整理しておきましょう。

誰もが認めるマグロの王様、クロマグロ

クロマグロのイラスト

クロマグロは、太平洋および地中海を含む大西洋の、主に北半球側に分布していて、太平洋に生息する太平洋クロマグロと、大西洋に生息する大西洋クロマグロは別種とされています。マグロ類では最も大型で全長3m、体重400kgを超えることもあります。寿命は20〜30年。

クロマグロは北太平洋を広範に回遊しますが、日本近海の南西諸島周辺および日本海に産卵場が複数あると推定されています。なので、日本の沿岸、近海では幼魚から成魚までが漁獲されるのです。

マグロの王様と呼ばれ、日本近海で獲れるものはほとんどが刺身や寿司用に生で流通し、高級品として取引されています。関東でメジ(メジマグロ)、関西でヨコワなどと呼ばれ流通しているのは、クロマグロの若魚です。

日本の遠洋はえ縄漁船が世界各地で漁獲したクロマグロの多くは船内で急速冷凍された後、冷凍運搬船に転載し、主に清水、焼津、三崎の3港に運ばれます。また、地中海諸国やメキシコで養殖されたクロマグロも冷凍や生鮮(空輸)で輸入されています。

南半球の宝石、ミナミマグロ

ミナミマグロのイラスト

インドマグロとも呼ばれるミナミマグロは、南半球の温帯域〜高緯度の冷水域に分布しています。クロマグロに似ていますが、クロマグロほど大きくはならず、最大で全長2.5m、体重260kg ほど。若魚のときはオーストラリア周辺の沿岸域で成長し、成長するにつれ、東西に回遊します。

ミナミマグロはクロマグロに次ぐ高級品として珍重され、主に刺身や寿司に利用されています。発色は鮮やかなのですが、色変わりするのが早いのが難点ともいわれています。オーストラリア沿岸(南岸のポートリンカーン近郊等)では養殖が盛んに行われ、日本に輸出されています。

目がぱっちりして可愛いメバチ

メバチマグロのイラスト

メバチはメバチマグロ、バチ、メブト、若魚はダルマとも呼ばれます。目がパッチリ大きく、英名もBigeye tunaです。

世界の熱帯〜亜熱帯域に分布し、索餌時期には温帯水域、産卵期には熱帯水域へと群れで回遊します。クロマグロよりも水深の深いところに生息し、成魚は全長2.5m、体重210kgほどになります。日本近海産のメバチは熱帯産よりも小型で、2m以上の個体は少ないようです。寿命は10〜15年。

メバチも主に刺身、寿司に用いられ、関東を中心に流通しています。外国産も多く、台湾・中国・バヌアツなどからは主に冷凍ものが、インドネシア・オーストラリアからは生で空輸もされています。日本近海ものでは、秋の三陸沖の生メバチが高い評価を受けています。

世界で一番たくさん漁獲されているキハダ

キハダマグロのイラスト

キハダマグロ、キワダとも呼ばれるキハダは第二背鰭と尻鰭が黄色で、成長につれ鎌状に伸長するのが特徴です。英名もYellowfin tuna。キメジはキハダの若魚のことです。

全世界の熱帯・亜熱帯海域に広く分布し、比較的表層を回遊します。成長が早く、2歳魚で産卵します。日本近海産は熱帯産よりも小型で、大きくても全長1.5m、体重70kgほど。寿命は7〜10年。

資源量が多く、世界および日本のマグロ漁獲量1位がキハダです。肉質は赤みが薄くピンク色に近く、脂ののりは少なめのあっさり味。日本では特に関西や名古屋で人気です。ツナ缶の原料としても利用されています。

ツナ缶のキング、ビンチョウ

ビンチョウマグロのイラスト

ビンナガは長い胸びれが特徴でビンチョウ、トンボ、カンタロウとも呼ばれます。比較的小型のマグロで、全世界の熱帯・温帯海域に広く分布し、漁獲される多くは50〜100cm のカツオと同じくらいのサイズです。寿命は12〜16年。

国内外を問わずツナ缶での利用割合が最も高いマグロです。キハダやカツオのツナ缶が「ライトミート」と呼ばれるのに対して、ビンナガは「ホワイトミート」と呼ばれ最高級のツナ缶原料とされています。

ビンナガのなかでも高緯度の冷水域で獲れた脂が多いものを「ビントロ」として売り出すなど日本では生食の消費も増えています。

ざっくりと5種類のマグロを理解したところで、次回は食卓にのぼるマグロはどこからどれくらいの割合で供給されているのかを探ってみることにしましょう。

イラスト/細密画工房

マグロ好き。

マグロ好き。

マグロ好き。

どんな種類がいるのか? 国産と輸入の割合は? 天然と養殖はどちらが多い? いつも食べている大好きなマグロのこと、意外に知らないのではないでしょうか?

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