Web版 解説ノート
2021年6月18日(金)更新
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2021年6月18日(金)更新
マグロの漁獲は「まき網」が中心
マグロはどのように捕獲しているのでしょうか。マグロ漁というと年末・年始にテレビ番組で流れる津軽海峡のマグロ漁が思い浮かびますが、世界のマグロ漁は「まき網」が中心です。
まき網は1980年代以降に急増し、現在では世界のマグロ類(カツオを含む)の漁獲量の6割以上を占めるまでになっています。日本のマグロ漁は、はえ縄とまき網が中心ですが、様々な漁法でも漁獲されています。
代表的なマグロ漁法をみてみましょう。
「一本釣り」でも獲れるビンナガ
鳥山や魚群探知機などで魚の群れを見つけると、活きたカタクチイワシをまき餌として投げ入れるとともに、船から水を撒いて水面をバシャバシャさせることでイワシが豊富にいると錯覚させて魚をおびき寄せます。集まってきた魚は擬餌針(ぎじばり)のついた釣り竿で1匹ずつ釣り上げます。
一本釣りはカツオが有名ですが、ビンナガでも、はえ縄漁とともに主要漁法となっています。また、テレビ番組で有名な青森県大間は竿を使わない手釣りですが、一本釣りに分類されます。
クロマグロの幼魚も捕まえる「ひき縄漁」
船の両舷の長い竿を真横に出し、船を走らせながら擬餌針をつけた仕掛けを複数流して魚を獲る漁法です。擬餌針を沈め、複雑な動きを与えるために潜航板を使用します。魚がかかると潜航板が反転して魚ごと水面に浮き上がるので、釣り糸をたぐって魚を捕獲します。
クロマグロの幼魚もこの漁法で漁獲され、その一部は国内のクロマグロ養殖の種苗用として活魚で取引されています。キハダやカツオなどの漁獲も多い漁法です。
全長150kmの幹縄に釣り針3000本の「はえ縄漁」
日本のマグロはえ縄による漁獲量の約6割を占めるのが、大型船による遠洋マグロはえ縄漁業です。日本を出発してから1年以上、世界中の漁場を巡りながら操業し、3ヶ月くらいに一度、燃油補給・乗組員の休養のために外国の港に寄港するのというが一般的です。
投縄するのは夜明け前。全長150kmを超える幹縄に約3,000本の釣り針に、イワシ・イカ等の餌を付けて海へと流します。この投縄作業に要する時間は約4〜5時間。マグロが餌にかかるまで3〜4時間待機し、漁具の回収(揚縄)を始めます。揚縄は機械(ラインホーラー)の助けも借りますが、手作業が主体なので10時間超えの重労働となります。
釣上げられたマグロは、船上で体長を測り、尾を切り離し、エラとはらわたを抜いた後、マイナス60°Cの冷凍室で急速冷凍し、長期保存されます。
まさに一網打尽。大量漁獲できる「まき網」
魚群探知機、ソナーなどで魚群を発見すると、浮きのついた大型の網を円を描くように広げ、魚を群ごと包み込むようにして獲る漁法です。まき網にもいろいろな種類がありますが、下の写真のまき網漁船は、通称「海外まき網」と呼ばれる漁船です。網のサイズは長さ2000m、深さ200m。
マグロやカツオを単船操業で漁獲し、漁獲後はただちに船内で急速冷凍して、大量に冷凍保管します。日本の鰹節産業にとっては、原料となるカツオの最大の供給源となる重要な漁業です。
主な漁場はミクロネシア連邦やパプアニューギニアなど南太平洋の島しょ国周辺海域ですが、その海域には日本漁船だけでなく、各国の大型まき網漁船もツナ缶詰の原料目的でキハダやカツオを漁獲しているため、まき網でのマグロ・カツオ漁獲量急増の一因となっています。
まき網は効率的に大量に漁獲することが可能な漁業ですから、マグロ、カツオの他、サバやアジ、イワシなど、多様な水産物をさまざまな水産関連産業に供給し、各地の地域経済を支える重要な役割を担っています。
しかし、その効率性ゆえに過剰な漁獲を防ぐため、さまざまな漁獲規制が国内外で進められています。
資源保護と消費国日本の役割
マグロ類の世界の漁獲量は1950年代から増加傾向にあり、2003年にピークの224万tを記録。その後増減を経て2017年に再び224万tを記録しています。国別の漁獲量はインドネシアがトップで、2位が台湾、日本は第3位です。
しかも、前回みたように日本は自国で獲るだけでなく、食卓にのぼるマグロの半分を海外から輸入しているマグロ消費大国です。WWF(世界自然保護基金)は、世界全体で獲れるミナミマグロの98%、クロマグロの72%、メバチの32%、ビンナガの26%、キハダの9%が日本で消費されていると報告しています。
ニュースでも報じられているように、太平洋クロマグロは資源量、回復の水準いずれも歴史的な低水準で危機的な状況にあるため、国際漁業管理機関であるWCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)での決定にもとづき、日本でも資源回復のため漁獲量規制による管理を2015年より実施しています。
WCPFCは日本、米国、韓国 等の関係漁業国・地域が参加していますが、第14回年次会合(2017年12月)で、北太平洋のクロマグロの親魚の資源量の回復状況に応じて管理措置を改訂する新規制を導入することで合意しました。
これは、現在設定されている暫定回復目標がクリアできれば漁獲枠の拡大を検討でき、逆に下回れば管理措置を強化するというものです。
規制が強化されれば、漁業者は収入が減りますし、マグロは品薄になって価格が上がり、消費者にはますます高嶺の花になるかもしれません。
しかし、持続的に食べられるようにするためには資源を守る漁業管理は必要です。また、国際ルールを守らずに獲られたマグロが海外から日本に入らないようにする仕組みの構築も重要です。
マグロ大好きな日本人だからこそ、資源保護の役割を果たす責任は大きいといってよいでしょう。
マグロ好き。
マグロ好き。
どんな種類がいるのか? 国産と輸入の割合は? 天然と養殖はどちらが多い? いつも食べている大好きなマグロのこと、意外に知らないのではないでしょうか?