アジの漁獲量が多いのは圧倒的に九州

アジの仲間は全世界の熱帯・温帯海域に多くの種類が生息します。種類は140種ともいわれており、サンゴ礁域に住む15cmくらいのミヤカミヒラアジから180cm以上にもなるロウニンアジまで、生息地も大きさも様々です。

共通しているのは頭から尾にかけて「ぜいご」「ぜんご」と呼ばれるトゲのような固く鋭い突起をもつ稜鱗が発達していることです。

鯵のイラスト
イラスト/細密画工房

ここでは、マアジを中心に取り上げます。

マアジは北西太平洋の固有種で、北海道から南シナ海まで全国に分布しますが、とくに日本海や東シナ海で多く漁獲されています。2015年の漁獲量(属人統計)を県別でみると長崎が圧倒的に多く42%、ついで島根17%。3位以下は福岡、愛媛、鳥取が同じ5%くらいで、3位以下は毎年のように入れ替わります。下のグラフは市場(水揚港)別の水揚量ですが、やはり九州や山陰地方が上位を占めています。

マアジの市場別水揚げ量(2016年) グラフ
出典:漁業情報サービスセンター(2016年)

漁獲される体長は30cmくらいまでですが、50cmまで大きくなるものもいます。

外洋を回遊する「回遊型」と、浅海の岩礁域に定着する「居つき型(瀬付き)」では、体色と体型が大きく異なります。「回遊型」は体色が黒っぽく、細長い体型をしています。一方、居つき型は全体的に黄色みが強く、体高が高く脂がのっているのが特徴です。

東京湾沿岸では回遊型を「クロアジ」「ノドグロ」、居つき型を「キンアジ」「キアジ」と呼んで区別しています。クロアジは春から夏にかけて北上し、秋から冬にかけて南下する「南北回遊」をし、キンアジは季節的に沖合と沿岸を移動します。

マアジは全国に広く分布しているため産卵期は非常に長く、いつもどこかの海域で産卵している感じです。西日本では年明けから初夏にかけて、関東沿岸では初夏から夏にかけて、北海道では8月頃が産卵期です。一般的に4〜7月が脂がのって美味しい旬の時期といわれています。

旨みの決め手となるイノシン酸が多いことから味にコクがあり美味しいからアジという名がついたという説もありますが、定かではありません。

また、漢字で「鰺」と書くのも旧暦の3月(新暦の3月下旬から5月上旬)に旬となったから、群れをなす(参集する)から、美味しくて参ってしまうから……など、様々な説があります。

デカい「アジの開き」はオランダ生まれ?

アジの消費は8割が国内生産でまかなわれていますが、2割ほど海外から輸入しています。

アジの輸入元(2016年) グラフ
出典:財務省「貿易統計」(2016年)

輸入元の1位は韓国です。対馬海峡の韓国側、主に済州島・対馬近海・忠武の3つの漁場で漁獲され、なかでも、済州島近海で獲れるアジは最高品質といわれています。

しかし、グラフからもわかるように輸入品のほとんどは欧州からです。1980年代、日本のアジの漁獲量が激減したために、欧州から輸入されるようになりました。なかでも多いのがオランダ産、アイルランド産です。

欧州で獲れるアジは、マアジと近縁のニシマアジという種類です。マアジに比べると頭と「ぜいご」がやや大きめで、ドーバー海峡周辺でも獲れることから「ドーバーマアジ」と呼ばれることもあります。

このニシマアジ、欧州ではあまり食されていなかったのですが、日本が干物用に大量購入するようになったことから経済的価値が高まり、漁獲対象魚となりました。

店頭に並ぶアジの開きでサイズの大きいものは欧州産だと思って間違いないでしょう。というのも国産の大きなアジは高い値がつくので、ほとんどが干物ではなく鮮魚として消費されるからです。

活魚料理店の水槽で泳いでいるのは養殖アジ

同じ青魚でも、イワシやサバと比べると、加工品よりも生鮮として扱われることが多いのがアジの特徴です。イワシ缶、サバ缶はあってもアジ缶はあまり見かけません。

アジは日本を代表する大衆魚の一つですが、養殖もされています。最も盛んなのが静岡県。沼津を中心に駿河湾奥部の波静かな海上生簀で養殖しています。

マアジの養殖収穫量(2014年) グラフ
出典:農林水産省「漁業・養殖業生産統計年報」(2014年)

養殖は、まず7〜8cmの稚魚を捕まえ、生簀で10カ月〜2年飼育し、15〜20cmくらいまで育てて出荷します。

出荷先は主に活魚料理店。店の水槽にアジが泳いでいるのを見たことがあると思いますが、これはほぼ養殖のアジです。養殖アジのほうが安定出荷できて、水槽で活かしやすいというのが理由のようです。

私たちが食べているサバは3種類

日本の食卓に並ぶサバといえばマサバ、ゴマサバ、タイセイヨウマサバの3種です。ちなみに1000尾に1尾くらいの割合でマサバとゴマサバのハイブリッドもいるそうです。

「マサバ」は千島列島以南の日本周辺および北米・南米の太平洋沿岸に分布します。背側に特有の緑青色の斑文があります。回遊魚で春から夏にかけて北上し、秋から冬に南下します。なかにはごく少数ですが回遊せず沿岸近くに留まる、いわゆる「瀬付き」のサバも存在します。

鯖のイラスト
イラスト/細密画工房

「ゴマサバ」はマサバよりも高温・高塩分の水域を好み、断面が丸いことから「マルサバ」と呼ぶ地域もあります。銀白色の地をした腹側に黒い小斑点があります。マサバが夏に味が落ちるのに対し、ゴマサバは脂の変化が少なく、夏が旬といわれます。漁獲量が多いのも夏です。

「タイセイヨウマサバ」は大西洋北部に生息するサバで、日本では1990年代初めにノルウェーからの輸入量が急増したため「ノルウェーサバ」と呼ばれることも多いです。背にくっきりと黒く太いラインがあるのが特徴です。5月〜6月に産卵すると、北上しながら成長し、大量の脂肪を蓄積します(体重の約30%)

では、我が国のサバの代表、マサバについて詳しく見てみましょう。

日本のサバ漁獲量は世界一

マサバは2歳で成熟します。太平洋側の主要な産卵地は伊豆諸島付近で、産卵の最盛期は3〜4月。卵は1mmくらいの大きさで、1回につき2〜9万粒と膨大な数の卵を4〜5回に分けて産みます。卵や孵化した稚魚は海流にのって沖合へと流されます。

サバの稚魚の口は大きく、早いうちからプランクトンを餌にしますが、特徴的なのは同じサバの卵や稚魚も食べてしまうこと。共食いをして大きくなるのです。

もちろん、稚魚は他の魚にも補食されますから、1尾のメスが10万粒の卵を生んでも、30mmまで達するのはわずか42尾(生残率0.00014)という研究報告もあります。

無駄にたくさん卵を生んでいるようですが、雌雄2尾から42尾、つまり約20倍に増えたと考えると、なかなか優れた生き残り戦略ともいえます。

全長3~5cmになると遊泳力もつき、群れをつくって回遊をはじめ、5cmを超えると沿岸に押し寄せます。春になると豊富な餌を求めて北上し、大きくなると秋の終りに群れをつくって南下し、暖かい海で越冬します。

これを繰り返して1歳で24cm、3歳で35cm、6歳で40cmくらいに成長します。寿命は約7年といわれています。

世界で漁獲されている魚のなかで、サバ類は大きなウエイトを占めています。そして、世界で最もサバ類を漁獲しているのが日本です。

サバ類の国別漁獲量(2013年)のグラフ

サバが小型で痩せてきている

1970年代、日本では100万トンを超えるサバの漁獲がありましたが、1990年にかけて急減、不漁が続きました。近年はサバの水揚げは好調ですが、痩せているサバが多いのだそうです。

サバの研究を続ける中央水産研究所資源管理研究センター(現水産資源研究所)の由上龍嗣さんにお聞きしました。

「漁獲量は増えているのですが、3歳魚なら35cm、520gくらいまで成長していいはずなのに29cm、270gしかありませんでした。小型で痩せているのです。

資源が増えると、一匹あたりの餌の量が減り、成長が悪くなることが知られています。これは『密度効果』と呼ばれ、豊漁だった1970年代もサバは小型化しました。


しかし、最近、増えたといっても70年代レベルまで回復したわけでもないのに、なぜ小型化したのか。理由はよくわかっていません。海洋環境が変化し、餌が少ないのか。回遊経路が変わり餌の少ない海域に行ってしまったのか。水温が低く成長が鈍ったのか……」

鯖 水揚げ時の写真

サバは鮮魚市場に流通するのは500gというのが一つの目安で、それ以下のサイズは塩サバや干物、缶詰といった食用加工品用になります。

小さなサバは養殖魚の餌に加工されるものも多く、総じて価値が低いのですが、100g前後のサバでもマグロ延縄漁の餌として高く売れるものもあります。

かつては鮮度の悪いものが飼肥料になっていましたが、港の処理能力以上の水揚げがあったために、鮮度がよくても飼肥料になってしまう場合も少なくありません。

日本からアフリカへ。現代版鯖街道

漁獲量の増加とともに、この10年でサバの輸出が急激に増えています。なかでも大きく伸びているのがアフリカ諸国向けです。アフリカにもサバ類はいるのですが、総じて貧しいアフリカ諸国。捕る漁船も技術も製氷機の設備もないため、魚は輸入に頼らざるをえません。

国産サバの輸出先(2016年)のグラフ

水産物輸出コンサルタントの原亮一さんにうかがいました。

「かつてアフリカは、旧宗主国である欧州からサバを輸入していました。しかし、欧州が資源保護のために、漁業を管理して大きな魚を獲るようになったことから、魚価が上がり、貧しい国は手が出せなくなってしまったのです。

ところが日本は小さなサバも漁獲しています。量が獲れてしかも安い。そこでアフリカ向けの輸出が始まったのです。

ガーナやナイジェリアの港に届いたサバは解凍後、保存性を高めるために丸のまま薫製にされ、マリやブルキナファソといったアフリカ内陸部にも運ばれています」

日本のサバがアフリカ内陸へ運ばれる。まさに現代版鯖街道です。

ガーナ港町での鯖の薫製風景の写真
ガーナの港町の薫製風景。船便で日本産の冷凍サバが届くと村は一面サバの薫製工場となる。シチューのような煮込み料理に使うことが多い。

それは「関さば」から始まった

日本各地にはさまざまなブランドサバがあります。大きく分けると、マサバ、ゴマサバ、養殖マサバで、そのほとんどは生食が可能です。

ブランドサバの代表格といえば、大分県の「関さば」。佐賀関沖の豊予海峡で大分県漁業協同組合佐賀関支店の組合員が一本釣りで獲ったマサバです。

鯖の写真

ブランド化されたのは1980年代後半。豊予海峡は「速吸(はやすい)の瀬戸」ともよばれ、潮流が速いことで知られています。餌となるプランクトンも多く、ほどよく太り、身が引き締まっています。

関さばの特徴のひとつは「瀬つきのサバ」であることです。基本的にサバは餌を求めて海を回遊するのに対し、「関さば」は大きくなってから瀬に居ついた「瀬付き魚」。地元では刺身で食べるのが一番とされていました。

一本釣りという漁法に加え、興奮しているサバを生簀に入れ落ち着かせることでストレスを減らし、出荷時には一匹一匹、脊髄から神経を抜く「神経締め」をして鮮度を保つなど、徹底した品質管理で質を向上させ、首都圏への流通拡大に取り組みました。

関東以北ではサバを生で食べる習慣がなかったため、首都圏進出は当初、苦労しましたが、その味わいを知った人々は絶賛。有名店での取り扱いも増え、1尾2000円以上する高級魚となったのです。

大衆魚がブランド化で高級魚に

「関さば」に続け、とサバのブランド化を目指す産地が増えました。

お手頃価格の大衆魚・サバも刺身用となると高級魚に変身します。まき網漁で漁獲された一般的なサバは、市場で比較的安値で取引され、スーパーマーケットなどに並びます。一方、刺身用のサバは主に一本釣りなので質がよく、数が少ないために高値で取引され、寿司店や料亭割烹などに卸されます。

この刺身用の需要を狙ったのがサバの養殖です。その先駆けともいえるのが2002年に登場した「ひむか本サバ」。以降、次々と養殖ブランドサバが登場しています。

ブランドサバにはひとつひとつ、産地ならでは、生産者ならではのこだわりが生み出した味わいがあります。ぜひ食べ比べてみてください。

食通をうならせる主なブランドサバ

では、代表的なブランドサバを紹介しましょう。

全国の主要なブランド鯖マップの画像

北釧鯖(ほくせんさば)
道東で漁獲され、釧路副港に水揚げされたマサバ&ゴマサバ。昭和50年代以降は全く獲れなくなっていたが水揚げが回復し、平成19年より釧路水産協会を中心とした水産業界でブランド化。旬は9~12月。

八戸前沖さば
「八戸前沖さばブランド推進協議会」が認定した期間に、三陸沖以北の近海で漁獲し、八戸港に水揚げされたマサバ&ゴマサバ。認定する漁獲期間は協議会が毎年判断して決定。旬は9~12月。

金華さば
宮城県金華山沖で獲れたマサバのなかから、石巻魚市場を中心とする「金華ものブランド化事業推進委員会」が定めた鮮度、脂のり、サイズなどのブランド基準をクリアしたサバ。旬は9~1月。

極上さば
銚子漁港に水揚げされたサバの中から、全体の1%しかない700g以上という大型サバだけに認定される。「銚子うめぇもん研究会」秘伝の熟成タレを用いて、刺身をはじめとする料理で楽しめる。旬は11~1月。

松輪サバ
東京湾三浦半島南部の松輪瀬で獲られ三浦市松輪漁港で水揚げされるマサバ。一本釣りで、人の手に触れることなく出荷直前まで生かし、鮮度保持されている。旬は8月末~9月半ば。

関さば
豊予海峡の瀬つきのマサバを一本釣りしたもの。水揚げ後は生簀で落ち着かせ、販売時には手で触って計量せず生簀の上から魚体を見て大きさや重さを判断して取引する「面(つら)買い」を行い、さらに買い付けた業者は活け締めで出荷をするという、徹底した品質維持がなされている。旬は10~3月。

旬(とき)さば
長崎県五島海域から対馬海峡で、10月から翌年2月に大中型まき網漁で漁獲した1尾400g以上のマサバ。全国有数のサバ水揚げ高を誇る松浦市・松浦魚市場に水揚げされる。

玄さば
佐賀県唐津「シーボーン昭徳」の船団が長崎県五島・対馬で漁獲したマサバ。1年に2週間ほどしかない「旬のなかの旬」とされる期間に水揚げされたもののなかから、同社の「玄人」が認めたサバをブランド化。

首折れサバ
東シナ海あたりで漁獲され、鹿児島県屋久島で水揚げされるゴマサバ。漁は一本釣りで、主に島北部の一湊漁港で水揚げされる。鮮度を保つために漁獲後すぐに首を折って血を抜くことから付いた名称。旬は9~11月。

土佐の清水さば
高知県足摺付近の瀬付きのゴマサバを「立縄漁法」によって釣り上げ、清水漁港に活魚で水揚げしたもの。水揚げ後は直ちに高知県漁協清水統括支所の職員が活魚水槽に移し替え、鮮度保持を図る。旬は12~3月。

ぼうぜ鯖
姫路市家島町坊勢島の4業者による養殖サバ。播磨灘へ回遊してきた小サバをまき網船団が漁獲し、大型の海上生簀で養殖。イワシやイカナゴなど天然の魚を餌に育つ。地元では「しゃぶしゃぶ」も人気。旬は11~5月。

お嬢サバ
鳥取県岩美町で、陸上養殖されたマサバ。飼育用と出荷用の水槽計13基を整備。7本の井戸で地下10mから海水をくみ上げているため、アニサキスなどの心配がない。

唐津Qサバ
唐津市と九州大学の共同研究によって開発された完全養殖のマサバ。年間平均の脂質含量量を20%以上にしている。呼子・鎮西旅館組合では「サバ活」と銘打ち、唐津Qサバの活き造りを提供中。

ひむか本サバ
宮崎県延岡市北浦町の「北浦養殖マサバ協業体」が養殖するマサバ。天然や人工孵化させた稚魚を無投薬で飼育し、400g以上のものを神経締めにして出荷。出荷前7日以上は餌を与えぬ工夫で、肉質向上に努めている。

長崎ハーブ鯖
長崎県松浦市、佐世保市の4企業から成る「長崎ハーブさば生産グループ」が共同開発した養殖サバ。餌にナツメグ、オレガノ、シナモン、ジンジャーのハーブを混ぜて飼育。

むじょかサバ
鹿児島県長島町の海で、5人の漁師が育てる養殖サバ。速い潮の流れによって身がしまっている。「むじょか」とは鹿児島弁で「かわいがる」という意味。