Web版 解説ノート
2024年1月22日(月)更新
イカ・タコとはどういう生き物なのか?
2024年1月22日(月)更新
イカ・タコは貝の仲間。
基本的に寿命は短い。
背骨がなく、柔らかい体を持つイカとタコはともに「軟体動物」、貝の仲間です。しかし、貝と違って固い貝殻は持っていません。
イカ・タコの先祖は、アワビのように岩に張り付いている貝でした。この傘のような貝殻が縦に伸び、細長い円錐形となると、内臓は貝殻の中に収まりました。殻の外にある頭部では目が発達し、平らだった足は、口の周りから伸びる複数の腕に変形しました。現代の生物でいえばオウムガイが持つ渦巻き状の殻が、トンガリ帽子状になっている感じです。
頭から直接足(腕)が生えている形態から、この仲間は、「頭足類」と名づけられました。固い殻を持つと防御力は高まるのですが、素早く動くことはできません。イカとタコの先祖は筋肉を発達させ、また、邪魔になる殻を退化させることにより、運動能力を向上させ、自由に海を動けるように進化をしたのです。
イカの胴体にある甲や軟甲は殻の名残で、コウイカ類の甲は海中で体を浮かせるのに役立っています。
タコは殻をなくしたことで、浮くことをやめ、海底で暮らすようになりました。殻がないために素早く這い回れ、狭い隙間へも自在に潜り込むことができるようになりました。
イカ・タコは貝の仲間ですが、大きな違いをいえば、不思議なことに川や池など淡水域に貝はいるのにイカ・タコは生息していません。
また、貝は500年も生きる寿命の長いものもいますが、イカ・タコは基本的に短命で、大人になり一回の繁殖期を経ると死んでしまいます。イカ・タコの世界では親と子が同時に生きることはないのです。
心臓は3つ、脳は9つ?
体の色も自在に変化。
イカ・タコで特徴的なのが心臓。イカ・タコにはなんと心臓が3つもあるのです。普通の心臓の他に左右のエラの根元に「エラ心臓」という血液を循環させる臓器があるのです。
イカ・タコの体はほとんど筋肉でできています。この筋肉を機敏に動かすのには大量の酸素を必要とするので心臓が3つできたといわれています。
血液中の酸素はヘモシアニンというタンパク質と結合して体全体に運ばれます。ヘモシアニンは無色ですが、酸素と結びつくと青色になるため、イカ・タコの血は青く見えることもあります。
脳もユニークです。タコは8本の腕それぞれが環境を探り、意思決定をしていることから、からだ全体を管理する脳と合わせて、合計9つの脳があるともいわれます。
また、イカ・タコの体表には色素胞という器官があり、瞬時に体の色を変えることができます。この能力を使い、タコやコウイカ類は周りの環境に合わせて岩や小石に擬態し身を守ります。そして体の模様を浮き立たせることで敵を威嚇したり、求愛のときに自分をアピールしたりもします。つまりイカ・タコは体色の変化で会話をしているのです。
精子のカプセルを
メスに渡してオスは昇天。
イカ・タコは寿命が短いものが多く、ほとんどの種類は1年。短い一生で1度だけの繁殖期を迎えます。オスは体色を変えながらメスに求愛し、メスがオスの求愛を受け入れると、つがいになり交接します。
交接の際、オスは精莢(せいきょう)と呼ばれる精子が入った細長いカプセルを交接腕を用いてメスに渡します。精莢から放出された精子はメスの体内に蓄えられ、産卵時に受精する仕組みです。精莢は破裂しやすいので、刺激を与えずにメスに渡せるよう交接腕の先端には吸盤がありません。
交接腕は1本ですが、種類により位置が異なります。イカの場合、スルメイカ、ホタルイカは右第4腕。コウイカ、ヤリイカ、ケンサキイカは左第4腕。ミミイカなどは左第1腕です。タコの場合はほとんど右第3腕が交接腕です。
交接が済むと、オスはその一生を終えますが、メスには、産卵の大仕事が待っています。産卵方法や卵の形・大きさなども種類によって異なります。
スルメイカは約20万個の卵が入った直径1メートルほどの大きなゼリー状の卵塊を沖合の海中に産みます。海の中層を漂う卵塊からは多くの稚イカが孵化していきます。
アオリイカは長さ9センチほど袋の中に1列に5個前後の卵が入った卵嚢を海藻に産みつけます。
タコは岩陰などに隠れて産卵します。マダコは1週間ほどかけて10万個以上もの卵を産み、卵についている糸を器用によりあわせ、房のようにして巣穴の天井に吊るします。
イカとタコはどこが違う?
①吸盤の形に注目
イカとタコの違いは足の数、タコが8本でイカ10本といわれますが、成長過程で8本になる種類のイカもいます。
むしろ違いは吸盤の形。タコはピタッと吸い付く切り株型。イカはワイングラス型で吸盤の内側には棘のあるリングがあります。
②イカは分身の術、タコは煙幕の術
イカ・タコは敵に襲われて逃げるときに黒い墨を吐きます。墨は体内の墨汁嚢に蓄えられていて、海水と一緒に漏斗から吐き出します。
イカの墨は粘り気があるので、海中で塊になります。稚イカは自分と同じ大きさの墨を吐き、敵がそちらに気を取られている隙に逃げます。忍術でいえば「分身の術」。成長したイカは相手に墨を吹きかけ、「目潰しの術」的な使い方をします。
タコの墨は量が少なく粘り気がないので、海中で広がります。こちらは相手の視界を遮りその隙に逃げる、いわば「煙幕の術」です。
③過保護なタコ、放任のイカ
タコのメスは産卵した場所を離れず、定期的に卵に水を吹きかけ酸素を送り、卵についたゴミを取り除くなどの世話をして、卵が孵化すると死にます。イカのメスは卵を産むと、世話をすることなく死んでしまいます。
不思議の国のイカとタコ
不思議の国のイカとタコ
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