Web版 解説ノート
2024年3月21日(木)更新
八戸のイカ漁を担う3タイプの漁船
2024年3月21日(木)更新
イカはどのように漁獲されているのでしょうか。
八戸に水揚げされるイカは、小型イカ釣り船、中型イカ釣り船、沖合底曳き船という3種類の漁船による漁獲がほとんどを占めています。
同じイカを狙うのでも、3タイプの漁船は漁場、漁期、用途など、それぞれに特徴があります。詳しく見てみましょう。
小型イカ釣り漁船
漁場が近く、生イカを水揚げ。
八戸ではほとんどが昼漁。
30t未満の船で行うイカ釣りを「小型イカ釣り」と呼びます。
10t未満の小型船は地元で別の漁をしながら、八戸沖にスルメイカが来遊する 7~9月頃に日帰りのイカ釣り漁を行います。
一方、10t以上の船はイカの群れを追いながら操業します。
5月に能登半島周辺の海域に向かい、そこから北上して、イカの漁場形成に合わせた長期間の操業を行います。釣ったイカは、その日のうちに漁場の近くの港に水揚げします。乗組員は 2、3人。操業しては陸揚げして、船で寝るという生活が続きます。7~9月に八戸沖で獲れるときだけしか、家に帰らない船もあります。
イカ釣りは集魚灯による夜釣りが一般的ですが、八戸周辺では20年ほど前から昼釣り(昼イカ漁)が増加しています。昼釣りは集魚灯に使う燃油代を節約でき、速やかな消費地出荷も可能です。その一方で、イカの群れを魚群探知機で探し回っての漁獲を繰り返す漁となるので、移動にかかる燃油代や船員の労力負担が大きく、体力的には夜釣りの方が楽だという声もあるようです。
大型・中型イカ釣り漁船
東へ西へ、アカイカも漁獲。
獲ったイカは船内で急速冷凍。
八戸の中型イカ釣り漁船は、毎年5月に出港して北太平洋(日付変更線あたり)でアカイカを釣り、7月に帰港します。陸揚げして4~5日後には次の操業に向かいますが、次の漁場は日本海でスルメイカを狙うか、再び北太平洋でアカイカを狙うかの2つからの選択となります。
漁獲状況や気象状況を見ながら決め、やはり約2ヶ月操業して、9月中旬に帰港します。そして年明け1~2月は山陰沖でスルメイカか、三陸沖のアカイカを狙うというスケジュールが一般的です。
大型イカ釣り漁船も5月から長期間の出漁をし、北太平洋でアカイカを漁獲します。
漁獲したイカは船内の作業場まで流れる構造になっていて、サイズ選別等の作業を経て船内の冷凍庫で急速凍結、保管を行います。これらは「船凍イカ」と呼ばれます。
スルメイカには2つの冷凍方法があり、1つはイカを「冷凍パン」に並べブロック状で冷凍する「ブロック凍結」。もう1つは1尾ずつ冷凍する「1尾凍結」で、これは「バラ凍結」またはIQF(Individual Quick Frozen)とも呼ばれています。
沖合底曳き網漁船
水温上昇のせいで、深い水深に
群れるようになったイカを漁獲。
八戸の沖合底曳き網漁船(沖底)の船体は黄緑色に統一されています。7~8月は休漁期で、9月に再開すると狙うのがスルメイカです。
操業は日の出から日没まで。漁場まで2時間かかるとすると、日の出が3時半なら、1時半出港となります。乗組員は13~15名。
底曳き網にはオッタートロール、かけまわし、2艘曳きの3種類がありますが、八戸の底曳き網はかけまわし漁。イカの群れがいる水深は200m 前後。ここ数年、本来いる水深の水温が高いせいか、より深い水深帯にいることが多いようです。
沖底のスルメイカは16時入札販売が基本。沖にいる船が今日の漁獲量を陸に連絡し、市場に各船の漁獲量が掲示されます。仲買人はそれを見ながら購入量と価格を計算し、入札に挑みます。
船は18時までには帰港して陸揚げ。仲買人は入札した分をトラックに積み、送り先へと運んで行きます。
夕方に入札があるのは、イカの加工場が多い函館に送るために苫小牧行きの最終フェリーの時間に間に合わせたい仲買人の事情を考慮して始まったのだそうです。
不思議の国のイカとタコ
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近年のイカの不漁は深刻です。解説ノートから「頭足類とはどんな生物なのか」とイカの水揚げ日本一の「八戸のイカ漁業」をピックアップしました。