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2021年10月20日(水)更新

おせち料理にみる海の幸。

2021年10月20日(水)更新

感謝と願いが込められたおせち料理

正月といえばおせち料理。みなさんの家では、どんなごちそうを食べますか?

おせち料理は郷土色の濃い食べ物です。食の嗜好が多様化し、情報や物流が発達するにつれ内容もローストビーフやテリーヌ、エビチリなど無国籍化しつつありますが、それでもその地方ならではのおせち料理を食べないと正月が来た気がしないという人は少なくないでしょう。

そして、食材を眺めてみると、面白いことに海に近い土地はもちろん、海から遠く離れた山奥でも伝統的に海産物を食べていることがわかります。代表的な海産物を重箱に盛りつけてみたのが下のイラストです。

これらのおせち料理にはどんな意味が込められているのでしょうか?

おせち料理のイラスト
イラストレーション/山本重也

A タイの塩焼き=「めでたい」→「めで鯛」の語呂合わせ。

B 数の子=子孫繁栄を願う。ニシンの卵巣の塩漬け。二親(にしん)からたくさんの子(卵)が生まれてめでたい、ということに由来する。ニシンは昔「かど」と呼ばれていたことから、「かどの子」が転じてカズノコ。

C 有頭海老=長いひげと、曲がった腰から、長寿のシンボル。小えびを串で留めた鬼がら焼が定番。

D 田作り(たづくり)=五穀豊穣を願う。昔は干したイワシを肥料として田畑に撒いたことから。おせち料理では、主に「かえり」サイズのカタクチイワシの素干しが用いられる。別名「ごまめ」は漢字で書くと「五万米」。

E いくら=おせちに登場するようになったのは、わりと最近のこと。子孫繁栄を願って。

F 昆布巻き=「喜ぶ」→「養老コンブ」の語呂合わせから。また「結ぶ」→「むつむ」に通じ、縁起のよいことから。主にナガコンブが使われる。

G トコブシ=別名を「フクダメ」というので、福がたまるようにとの願いから。

H ブリ=出世魚であることから出世祈願。

I ハゼの甘露煮=ハゼはエサを素早く飲み込むことから「早く目標を達成させる」という縁起を担いで。

J 紅白かまぼこ=半円形は門出にふさわしい日の出のシンボル。紅は魔除け・めでたさ、白は神聖を意味する。もとは神饌の赤米・白米を模したという説も。

K 伊達巻=白身魚などのすり身に溶き卵と出汁を加えてすり混ぜ、甘めに調味して焼き上げ、熱いうちに巻き簾で形を整えたもの。巻物は書物に似た形から学問や文化を意味することから学問成就を願って。

L 小肌の粟漬け=小肌(コハダ)はコノシロという魚の成魚になる前の名前。出世魚なので縁起がよい。クチナシで黄色く染めた粟で五穀豊穣を願う。

M 酢だこ=関東以北でよく用いられる。おせち料理に登場する由来には諸説ある。断面が紅白で縁起がよいこと。また、タコは「多幸」に通じることや、凧あげのように運気をあげたいという願いからなど。

N 紅白なます=お祝いの水引をかたどったもの。平安、平和を願う縁起物。生の魚介と大根、にんじんと酢で作ったことから、「なます」の名がついた。「氷頭(サケの頭)」「するめ」などを加えることも。

盛りつけにも地方色があり、関東は大皿盛が多く、全国の主流は各自の膳で祝うスタイル。重箱に詰めるというのは東海・近畿地方と少数派でした。この重箱詰めが一般的となったのは戦後のことです。

おせち料理は、正月に各家庭にやってくる「年神様」をもてなし、神様と一緒に食べることにより、無事に一年が過ごせたことを感謝し、新しい年もつつがなく過ごせるようにという願いから生まれた風習といわれています。

現在では年が明けてからおせち料理を食べますが、もともとは大晦日の夕飯から食べていました。というのも、昔は太陽が沈むとともに一日が終り、日が変わるとされていたので、大晦日の夜こそが新しい年の始まりだったのです。年齢も誕生日を起点とする「満年齢」が普及するまでは「数え年齢」で、誰もが正月を迎えると同時に一歳年をとっていました。

こうした「年取り膳」を食べ、初詣に行く新年の習慣が定着したのは江戸時代といわれています。

お正月と海の幸

お正月と海の幸

お正月と海の幸

おせち料理には海の幸がふんだんに使われています。お雑煮のだしだけでも鰹節、煮干し、昆布、スルメ、マハゼ……とさまざま。海に囲まれた島国日本の食のルーツを感じますね。

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